毛髪総合ページ

毛周期とは

毛周期
毛は生えて抜け落ちる、を繰り返しています。この周期を毛周期と呼んでいます。毛周期には、毛が伸びる成長期、抜ける準備をする退行期、あとは抜け落ちるまでの時期である休止期があります。周期は繰り返しまわり、抜け落ちたところからは新たに毛包が生え始め、成長し伸びていきます。毛髪の成長期は5~7年ほど続き、その後3週間ほどの退行期を経て、休止期(3か月)となります。正常な毛周期であれば一日100本程の抜け毛があります。

女性も男性も薄毛という現象は起こります。薄毛になる原因としては、男性ホルモン、加齢、血行不良、食生活、等々と様々なことがあげられますが、いずれの薄毛も『成長期が短くなる』ということは共通です。一度、成長期が短くなると、次の成長期も短くなり、髪の毛はどんどん細く短くなります。成長期が短ければ、その分、抜け落ちるまでの時間が早まることになります。抜け毛が多い=成長期が短くなった。と考えることができ、成長期が短くなることで、髪の毛は細く短くなります。さらに、成長期が短くなると、その次に生えてくる髪の毛の準備も十分にできていない可能性があります。よって、成長期が短くなるというサイクルを繰り返すことによって、負のスパイラルに陥り、抜け毛が増え、短い毛が多くなり、生えてくるのが遅くなるということがいえます。
成長期の変化(右:成長期が短い人の場合)

FGF-5と毛周期

1994年の論文でFGF-5が成長期から退行期へのスイッチとなっていることが発見されました。さらに1998年の論文ではFGF-5のターゲットが毛乳頭であることが示されました。毛乳頭は毛髪の司令塔であり、成長期や退行期へのスイッチのカギとなる場所です。別の場所で作られたFGF-5が毛乳頭へ働きかけ脱毛シグナルを出していると考えられています。

そこで、研究者たちは、毛乳頭に働きかけるFGF-5を抑える物質を見つけることで、抜け毛を減らす効果を期待しました。すなわち、成長期から退行期へ移行させずに、成長期を伸ばし、毛髪を太く長くしようと考えました。

2007年の論文では、実際にFGF-5を抑えることにより、脱毛防止できないかと考え実験が行われました。何種類ものエキスの中から探し出されたのが『ワレモコウエキス』です。さらに、脱毛に悩む被験者39名の協力を得て、ワレモコウエキスには、抜け毛数および休止期毛率を有意に減少させる効果があることがわかりました。
FGF-5の効果

FGF-5は何をしている?

マーティンゲイルらは、FGF-5の役割を調べるために、FGF-5遺伝子が働かないノックアウトマウスを作りました(遺伝子を働かなくして、機能を調べる方法)。

そして、FGF-5が働かないマウスは、普通のマウスよりも体毛が長くなるという結果になりました。
FGF-5が働かないことで毛は長くなる。言い換えると、FGF-5が働くことで毛は短くなる。ということになります。
よって、FGF-5は、『毛を短くする役割があるのではないか』と推測されました。
長毛のウサギ
一般のマウスよりも体毛が長く『長毛』なマウスには、自然変異で発生したアンゴラマウスがいます。
そこで、アンゴラマウスは、どの遺伝子が原因で長毛になるかを調べてみることにしました。

FGF-5遺伝子による体毛の変化
遺伝子の変異を解析する方法で調べてみると、アンゴラマウスはFGF-5遺伝子に異常があり、うまく働いていないことがわかりました。つまり、FGF-5遺伝子の変異が長毛を引き起こすということです。
人工的な変異(ノックアウトマウス)、自然変異(アンゴラ)のどちらも、『FGF-5が働かなくなることによって長毛になる』ということが証明されました。

結果、FGF-5は毛の長さを調整しており、FGF-5が働かなくなると毛が長くなるということがわかりました。

さらに、マウス以外の動物でもFGF-5が働かなくなると毛が長くなるということがわかってきました。
FGF-5の働きが抑制されたウサギの長毛種(アンゴラウサギ)(右)

FGF-5はどこに働きかける?

FGF-5が毛のどこに働きかけているかを調査しました。

FGF-5には、FGFR1に結合することが知られています(オルニッツ氏論文)。そこで、FGFR1が毛包のどの部位で発現しているかを調べたところ、FGFR1は、毛乳頭で発現していることがわかりました。
FGF-5が成長期の後期に出ることで毛乳頭にそのシグナルが伝わり、さらに毛乳頭が退行期へと誘導するシグナルを出しているのでないかと考えられました。
実際に毛乳頭細胞へFGF-5を添加する実験を行ったところ、この反応を示すことがわかりました。
FGF-5は毛乳頭に働く!
次に培養した毛乳頭細胞にFGF-5を加える群、そうでない群でわけて比較実験を行いました。
その結果、FGF-5を加えた毛乳頭細胞群は、FGF-5に反応して細胞の塊が崩れ、周辺に広がる速度が早まりました。
『毛乳頭でFGFR1が発現し、毛乳頭はFGF-5に反応する。』この実験結果から、FGF-5が毛乳頭に働きかけ、FGF-5に反応した毛乳頭が退行期に移行させている。ということが考えられています。

FGF-5はいつどこで作られる?

次にFGF-5は、毛のどこで作られるかを調べました。
その結果、外毛根鞘と呼ばれる部位の下部(図の黄色)で、出ていることがわかりました。
しかし、FGF-5は常に出ているわけではなく、ある特定の時期に出ていることもわかりました。
それは、毛周期の『成長期後期』です。成長期の後期は、毛が抜ける準備をする『退行期』の少し前です。すなわち、毛が抜ける前にFGF-5が出ているということが実験により証明されました。
これらの結果から、FGF-5は、毛周期を調整していることが推測され、成長期の後半でFGF-5が出てくるという事実は、FGF-5が成長期を終わらせ、退行期へと導くシグナルであるということがわかりました。
従って、FGF-5が働かなければ退行期には移らずに、成長期が伸び、毛が長くなるということになります。
FGF-5が働かなければ毛は長く伸びる

ワレモコウエキスのFGF-5の活性抑制効果と育毛効果

1. FGF-5を抑制する植物エキスの発見

FGF-5の作用を抑制することができる物質は、毛髪が退行期へ移行することを抑えるため、脱毛予防の有効成分として期待できそうです。
この研究では遺伝子工学で作成した特殊な培養細胞を使って、植物エキスの探索をしました。その結果、ワレモコウエキスなど数種類の植物エキスにFGF-5活性抑制効果を見出しました。

効果を確認するために、ワレモコウエキスをFGF-5とともにマウスに皮下注射しました。FGF-5を注射すると毛包が縮小しますが、ワレモコウエキスを同時に注射すると毛包の縮小が26%抑えられました。
これにより、ワレモコウエキスのFGF-5活性抑制効果が確認されました。

2. 成長期延長効果の検討

体毛が休止期状態のマウスを除毛後、ワレモコウ抽出液を毎日塗布し、成長期が終了しそうな時期に皮膚色を観測しました。
成長期毛のメラニン色素で黒く見えていた皮膚が、エキスを使わないと白く変化して成長期が殆ど終了していたのに対して、ワレモコウエキスを塗布した皮膚では、まだ黒い色調が残っていました。

詳細に検討するため、毛包を観察しました。その結果、エキスを使わないマウスの毛包は短く、休止期毛が頻繁に見られたのに対して、ワレモコウエキスを塗布したマウスからは毛包が長い成長期毛が多数見つかりました。

このように、ワレモコウエキスには成長期を延長する効果があることがわかりました。

3. 育毛効果試験

ワレモコウエキスの育毛効果を検討するため臨床試験を実施しました。
脱毛の悩みを持つ23人の方に、ワレモコウエキスを1日2回、頭皮につけて軽くマッサージしてもらうことを4ヶ月継続してもらいました。

解析の結果、シャンプー時に抜ける抜け毛数は、2か月後に13%, 4か月後に32%減少していました。
また、抜け毛中の軟毛(短い毛)が4か月後に37%減少し、軟毛の割合が減少する傾向がありました。
このように、抜け毛評価においてもワレモコウエキスに改善効果が認められました。
次に、フォトトリコグラムという方法で毛髪の伸長速度を測定した結果、2か月後に12%、4か月後に18%毛髪が増加していました。 詳細に解析してみると、休止期の毛が2か月後に21%、4か月後に32%減少していました。つまり、その分、成長期にある毛が増加していたのです。 このように、毛髪の伸長状況において、ワレモコウエキスによる改善効果が認められました。

上記結果に本人の感想、医師の問診結果を加えて総合的に判定したところ、ワレモコウエキスの育毛効果において、使用した人の4分の3で有用性が認められました。

また、ワレモコウエキスで観察された臨床的効果にはFGF-5活性抑制効果が関与していることが推察されました。
フェイスブック
ユーチューブチャンネル
ツイッター
LINE